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誰かがいった。

そうじゃなくて私が言った日常の何か。

在る朝日。

旅をしていた時の話。
私はある人に会った。名前も、仕事も、何も知らないその場限りの出会い。
その出会いは偶然が生んだもので、再現なんて出来ないもの、けれどとても大切に思っている。
彼はこんな話を初対面の私に続けてくれた。

「みんな何かをするたびにあまりにも急ぎすぎると思うんだ。
たとえば僕の友人は何かをしてはすぐに意味がなかったと嘆く。でも、それは違うと思う。

何かをして、その意味が分かるのは少なくとも10年はかかると思うんだ。それが良かったのか、悪かったのか、それもあるだろう、それだけではない。それで何を得られたかだなんて、10年経って、得られたものがある自分に気付いて、その行動の意味を知るんだ。

だからね、判断を急いではいけないよ。その行動をしたこと、それだけを心に留めておくんだ。いつかきっと思い出して、自分のものになる。

出来るだけ多くのことをして、そのことをありのままに覚えているといいと思うんだ。良くも悪くもないんだよ、行動が意味を持つこともある。」

うろ覚えながらもその言葉は私にきちんと残っていた。
その人はゆっくり絞り出すように、そんなことを教えてくれたのだった。

「そういえば君、喫煙者と言ってたのに吸わなかったね。」
「あまりにも話が楽しくて。良い出会いになってよかったです。」
「僕もそう思う。もう着くけれど一服しよう。」

そうして、喫煙所に向かって、彼がくれたタバコを吸いながら朝日を眺めたこと、彼がくれた温かい飲み物が染み渡ったこと、多分忘れられないと思う。

尊い朝だった。二度とない出会いだった。

その会話をあと10年経って、もう一度噛みしめる事は。